金の価格の動向はリーマン・ショックで変わった?

アメリカの有力証券会社リーマン・ブラザーズの破たんは、世界に衝撃を与えました。リーマン破たんの影響を受け、大手生命保険会社のAIGの経営までおかしくなりましたから、金融機関の経営に対する世間の目は厳しくなりました。こうして金融商品の取引減少、株価の世界同時暴落という世界的な不況への引き金となったのです。

この影響を受けて一時的に金の価格も下落しました。リスクが高い金融商品からリスクが低い預金へと資金が流れる動きに巻き込まれたからです。ですが、すぐに金へ資金が戻ってきました。実体のないものより、実体のある金がベターだと市場が判断したのでしょうか。ともかくこれにより、2000年代の金価格の上昇傾向に拍車がかかりました。

リーマン・ショックの前後で金の値上がりの理由が変化したと言う点に注目すると、リーマン・ショックは金の転換点だったと言えます。それまでの金価格上昇の理由は中央銀行の金の売却制限、鉱山会社の金の先売りの減少などでしたが、リーマン・ショック後は金融不安が世界的に広がったことが理由となりました。

金ETFはリーマン・ショックのさなか、残高を大きく増やしました。世界的に株価が暴落したため、実物資産である金に資金が集中したのです。

金ETFの特色は、長期保有を前提とした投資家が少なくないということです。個人投資家や年金を運用する機関投資家が主な購買層で、彼らは中長期的な保有を目的にしています。金ETFは金の価格の根雪部とも言われています。なかなか溶けない根雪のように、簡単に売りに出されないと予測されるのが理由です。

保有する投資家が全部を一度に売ってこない限り、金ETFにより値上がりした価格の分は下落しないと言えるでしょう。金ETFがある限り、金がまた400ドルまで下がることはないと断言しても良いと思います。では今後金の価格はどれくらいまで上がるのでしょうか?

1980年につけた850ドルは、今の価値に換算すると2,200ドルになると前述しました。一応そこまで上がったのですから、何かの拍子に2,200ドル台まで上がるのではないかと考えられてきましたが、2,000ドルを超えることがない以上、2011年9月につけた1925ドルが当面の最高価格となります。

一方、1980年1月につけた6,495円が、円建て金価格の最高値と現在なっています。※(2020年6月25日に6,713円の史上最高値を更新)2000年からの金価格高騰の流れに乗り、ほとんどの通貨で2011年、2012年に最高価格を更新しています。しかし円建て金はまだ最高値を更新していません。円建ての金価格は為替相場に左右されますから、円安に振れれば円建ての金価格は上昇するはずです。ですが1980年の為替相場が1ドル240円だったことを考慮すると円の大暴落か、さらなるドル建て金価格の暴騰が無い限り、最高値更新は難しいでしょう。

もっと具体的に考えてみると、ドル建て金価格が1,600ドル台を維持するならば1ドル120円台半ばで、円建て金価格が6,500円近辺まで上昇する計算になります。また1ドル100円まで上昇すると仮定すれば、ドル建て金価格が2,000ドルを超えると、これまた円建て金価格が6,500円付近になるはずです。

この数字を実現可能と見るか、不可能と見るかは各々の相場感次第だと思います。

関連記事

ページ上部へ戻る