東西冷戦の終わりと、金価格の関係は
1989年、それまで東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」が崩壊します。1991年にはソビエト連邦の崩壊が起こり、ソビエトに属していたたくさんの小さな国が、それぞれに独立していきました。東西冷戦の片方のソビエトが解散してしまった形で、東西冷戦は終結しました。
その後、金の評価は一変。その時期の金価格は、金の増産による供給過剰で低迷していました。そこへ東西冷戦の終結です。第三次世界大戦への不安を抱えていた世の中からその不安感がなくなった結果、「有事の金」は時代遅れの考えだとされていったのです。
以前は紛争やテロがあるたび、トップニュースでなくても金価格はすぐに反応し価格が上昇しましたが、そういうことも減りました。イラクのクウェート侵攻や、湾岸戦争のときにも大きな反応はなく金価格は下落し続け、1997年7月、252ドルという安値を記録しました。
金が安くなってしまうと困るのは各国の中央銀行です。保有している金の量が莫大なだけに、価格の下落の影響も大きいからです。それに対する対策として、欧州中央銀行は「ワシントン協定」を結びました。金の売却の総量規制をするもので、これによって金の価格は大底を打ちました。その後は現在まで金価格は上昇を続けます。
上昇をより加速したのは2001年9月に起きたアメリカ同時多発テロでした。ドルも原油も急落し、「有事の金」が急騰したのです。