歴史的な金の最安値はいくら?

1945年から始まったブレトン・ウッズ体制で定められた1トロイオンス35ドルが、国際的な最安値と言えるでしょう。2013年4月時点の価格が1,500ドル近辺ですから、かなり安かったことがわかります。他の国々が金本位制を停止する中アメリカだけが金ドル本位制を維持できたのは、世界の金の総量の3分の2を保有できたアメリカの巨大な経済力の後ろ盾があったからなのです。

そんな巨大な経済力も1960年代のベトナム戦争で陰りを見せ、その結果、各国がドルへの疑念を招くようになり、特にヨーロッパ各国がドルを金に大量に交換したことで、アメリカから金が流出していくことになります。金の流出防止のため1トロイオンス42ドルまで交換レートを引き上げましたが、焼け石に水状態で結局ニクソン・ショックまで金の流出は続いたのです。

金の需要と供給により価格が変化する変動相場制はこれにより始まりました。この時まで金の価格は1トロイオンス当たり35ドル(後に42ドル)と固定されていたのです。

金の価格が自由に決まるようになると、変動を繰り返しながら価格は推移してきました。ですが35ドルより下になることはなく、ニクソン・ショック以降の1970年代には上昇傾向になっていきました。

日本においては1973年に金の輸入が解禁され、また1978年には輸出が解禁になり金の売買自由化がようやく実現しました。1982年には現在の東京商品取引所で金の先物取引が始まり、金の取引が徐々に活発化していきました。

金の価格自由化(ニクソン・ショック以後)後の最安値は、1999年1月の1トロイオンス252ドルです。円建てでの最安値は同じ年の9月に付けた1グラム917円になります。この時なぜ金の価格が最安値をつけたのでしょうか?

ソ連の崩壊による冷戦の終結、ITバブルによる産業の隆盛、そのようなことを理由として1990年代にアメリカの経済が持ち直しました。その経済を背景とした強いドルが復活したのです。これに反比例するかのように金は売られました。金を持たなくてもドルさえ持っていれば問題無い、そういう時代だったのです。

ドルは世界経済において重要な役割を演じています。金はドルが売られると買われ、逆にドルが買われている時は売られる傾向にあります。アメリカ経済の動向が金の価格に連動しているのはほぼ間違いありません。その証拠にアメリカ経済が好調だった1990年代に、金はもうひとつの最安値をつけたのです。

金はドルのアンチテーゼ(反対の理論・主張)であり、ドルと金は反比例の関係にあるとよく言われています。確かに金価格が低空飛行を続けた1980年代から1990年代にかけて、ドルインデックス指数は安定しており、2004年以降は金の価格が急上昇する一方、ドルインデックス指数は低いところから抜け出せない状態です。

サブプライム問題、リーマン・ショックなどでドルへの信頼が再び揺らぎ、その影響で金への資金の流入が激増したのです。今後、ドルの信頼が三度復活し、その強さが確かなモノになったら、金に関しては暗い材料になることでしょう。しかし1999年につけた252ドルの最安値までつけることは無いと思われます。

2000年代半ばから始まったドルへの信頼の揺らぎによって、それまで金への関心が低かったアメリカの投資家の目が、他の金融製品のリスクヘッジの手段として金へと向けられたのです。それにより金へのイメージも変化し、身近なモノと認識されるようになりました。

最近ではポートフォーリオの一部を金で持つ投資家が少なくありません。また金への投資環境も整えられています。もしアメリカの株価が上昇し、再びバブルになっても、そういう理由から金が300ドルを割ることは無いと思われます。

関連記事

ページ上部へ戻る