金の大転換点となる出来事は何ですか?
1978年8月のニクソン・ショックが金と経済の最大の転換点だったと言えるのではないのでしょうか。このニクソンショックは2つの出来事から成っています。ひとつは米中が国交を結んだこと、もうひとつは金とドルの交換停止を発表したことです。
もともと金本位制を1816年に始めたのはイギリスであり、その後各国が追従したことから、20世紀初頭には国際的な金本位体制が完成しました。国同士の貿易には、外国為替取引が必要ですが、金本位制は金を媒介にして各国の通貨の交換レートが決まる固定相場の仕組みです。ところが世界大戦が勃発し各国の関係や経済規模が変動すると、各国は管理通貨制度に移行し、金本位制は実質的な機能を停止。そして2度目の大戦が起こり、その後安定した為替取引を行う目的でブレトンウッズで1944年会合が行われたのです。
翌年IMFが成立し、国際的な価値を持つ金と大戦により世界の基軸通貨となったドルを決済手段とする「金ドル本位制」も成立しました。これによりアメリカは35ドルで1トロイオンスの金を得られるようになり、同時に各国の通貨とドルの交換レートも決められました。これを一般にブレトン・ウッズ体制(固定相場制)と呼びます。
このブレトン・ウッズ体制を壊したのがニクソン・ショックでした。1960年代以降アメリカはベトナム戦争によりその財政を急激に悪化させてしまいました。それを見た各国はドルへの信用を喪失し、大量のドルを金と交換したのです。金の総量が3万トンだった当時、アメリカは2万トンの金を保有していましたが、ニクソンが金とドルの交換停止を発表した時点でその量は8,134トンにまで減少していたのです。
法律で保有する金以上の紙幣を造幣していけないとなっていたのですが、金の急激の減少でドルの発行バランスが崩れ、ついに金とドルの交換保証ができなくなったのでした。
ニクソン・ショックによりドルとの連動が解かれたことで、金の価格は需要と供給で決まるようになりました。またドルと各国通貨との交換レートも一時期「スミソニアン体制」を急いで作り、固定相場制維持に動きましたが結局崩壊しました。その結果1973年から変動相場制に移行し、現在、各国の経済力や需要と供給により為替レートが決まるようになっています。
需要と供給が価格の決定に寄与するようになった金は、世界経済の動向に大きく影響を受けるようになりました。戦争や景気で価格が変動し、2000年以降は経済に対する先行き不透明感から価格が上昇を続けています。
最近の金相場は各国の金融緩和により上昇している面があります。金融緩和により各国の中央銀行は紙幣をどんどん造幣し、実質金利はマイナス、設備投資や消費に回るはずだった資金が金に流入を続け、その結果、金の価格は上昇しています。また現在のような過剰過ぎる流動性はインフレを呼び込む恐れがあり、さらなる金への資金流入を呼ぶことになりそうです。