金の都市鉱山とはどういうもの?
工業製品等に使用された金属を都市に眠る資源とみなして出来た言葉が、都市鉱山です。またそこから積極的に資源の回収にチャレンジすることを指す場合もあります。これは1988年に、東北大学選鉱製錬研究所教授の南条道夫氏らが提唱したのが始まりです。
そしてその後、物質・材料研究機構の原田幸明氏によって都市鉱山に埋蔵された資源の規模が明らかになりました。2008年に公表された研究結果によると、日本の都市鉱山だけで埋蔵量は6,800トン。現在世界で最も金を保有しているアメリカの中央銀行の金の量が8,300トンですから、それに匹敵する量が日本に眠っているのです。日本にある都市鉱山の金の埋蔵量は、世界最大級なのです。
電子機器の部品であるIC回路には、金メッキ溶液や金線が使用されています。金価格の高騰から代替品の研究もされているようですが、金自体の信頼性からまだまだ使われているのが現状です。IC回路を組み込んだ携帯電話やパソコンは毎年新製品が出て、その分古い物は処分されますから、その古い物から金を効率よく回収できればエコにも繋がります。
つい最近までは金を回収するのが困難だったため、ゴミとして処分されてきましたが現在では技術が確立し、リサイクルの対象になっています。古い製品ほど金の使用量が多いですから、古い物ほど価値があると言えるかもしれません。
1トンの鉱石から取り出せる金の量は、およそ0.3~0.5グラムにすぎません。工業製品では通常、製錬された金が使用されていますので、含有率は都市鉱山の方が多く、効率が良いのです。また金の不変性から灰の中からでも回収が可能です。
都市鉱山には、金以外にも、銀、銅、鉛、インジウムなどが豊富に蓄積されていて、世界的に見ても日本の都市鉱山は宝の山なのです。データでは世界で必要とされる2、3年分の金属や貴金属が日本の都市鉱山には眠っているそうなので、とんでもない量があることになります。
都市鉱山からどれだけの資源を回収できるのかは定かではありません。しかし技術革新を進め、回収できる量を増やしていくことが重要なのは変わりありません。
現在、写真ラボの廃液を回収し、そこから溶けている銀を再生することを始めた企業があります。デジカメが主流になってきているため、銀塩フィルムの需要は減少していますが、デジカメ本体にはスクラップ1トン当たり500グラムの銀を含有していますし、金も150グラム含有しているそうです。この数字を見れば鉱山から生産するより効率が良いことが一目瞭然です。
また秋田の小坂精錬所は、鉱石を選鉱・製錬する過程で不純物を取り除く技術を生かして、電気製品のスクラップから金属を回収する精錬所に生まれ変わっています。
世界規模で見ると、現在金の供給のおよそ4割はスクラップ品が占めています。2011年の金鉱山からの供給が2,818トンであったのに対し、スクラップからのそれは1,661トンにおよびました。装飾品スクラップが多いと予想されますが、工業品スクラップも少なくないはずです。
不変性から一度掘り出された金は半永久的に地上に存在することになります。ですから、スクラップ品からの回収はさらに進むことでしょう。都市鉱山からの回収が続く限り、金に限れば枯渇の心配をする必要はありません。