消費税の増税は金取引にどのような影響を与えるのか
2014年に8%、2019年に10%と消費税が増税され、それについて事前にわかっていたというのは投資家にとって稀有な例と言えます。
2013年度内に金を購入したならば、2014年で3%、2019年で5%、それぞれの年に金を購入するより安価に金を購入することができるのです。よって将来的に金を買うつもりなら、2013年度中に買う方が良い事となります。
ここでちょっと極端な話をします。仮に3月31日まで消費税が5%、次の日である4月1日には消費税が8%になる場合、3月31日中に金価格+消費税5%で金を購入し、あくる4月1日に金価格+消費税8%で売却できた場合、相場が同じだと3%分多く得ることができます。1グラム5,000円だとすれば、150円分。1キログラムの金の延べ棒なら15万円分も多くなるのです。
ですが、ここで考えなければならないものがあります。まずは小売価格の売買スプレッドです。80円あるとするならば、売買が成立した時点で80円支払っています。次に相場の変動リスク。仮に1日相場が微動だにもしなかったら、150円-80円=70円が儲けとなります。
しかし、相場が1日で70円以上、下落すると逆に損を出します。1日で70円も相場が動くことは通常あまりありませんが、可能性はゼロではありません。実際2013年4月には、1日で300円変動したことがあったのです。相場リスクを軽く考えてはいけません。
また小売価格の値付けの「味付け」も潜在的なリスクとなるでしょう。増税前の駆け込み需要で金の購入希望者が増えると、金の現物が買われて同時にプレミアムも上昇します。小売価格がロコ・ロンドンより割高になる可能性があるのです。そして増税後、反対に金の売却希望者が増えれば、小売売却価格が割安になる可能性が高いのです。80円の売買スプレッドに変化が無くても、そのスプレッドが上下にズレる可能性はあるのです。
仮にロコ・東京の中心価格が5,000円とすると、中立価格は、買いが4,960円、売りが5,040円になります。しかし売買の需要によっては、その値段は上下に乱高下します。こうなると当初見込んでいた「のりしろ」が僅かになってしまいます。ですが、これは市場のメカニズムから考えると不自然なことではありません。ですから、「のりしろ」が少なくなるのは必須と考えるべきなのです。
様々な条件を考慮すると短期的な税率の差に着目した取引は、リスクを負うこと無く儲けられる訳ではありません。現物に関する限り、このような取引はしない方が良いというのが多くの投資アドバイザーの共通した意見。
現物の取引では相場変動リスクは無視すべきではない旨、前述しましたが、トコムの金先物取引を利用した場合、相場変動リスクを考えなくてもよい取引を行うことができます。
税率が上がる前の2014年2月限の金先物を購入し、同時に2014年4月限で売却します。この売買を同時に行えば、先物取引はその当時のスポット価格で行いますから、だいたい同じ価格になるはずです。同じ単価で売買を行いますから、2月と4月の間の相場リスクは無いのと同じです。
2月限は反対売買を行って手じまいにしたりはせず、そのまま最終取引日まで待ち、購入価格での総代金と消費税5%を支払います。そしてその対価として金の延べ棒の倉券を貰います。そしてそのまま4月になるまで倉庫に預けたままにしておき、4月末になったら同じように4月限について手じまいをせず、先程の倉券を売り方として渡します。そしてその時、売却代金と消費税8%分を受け取ります。
この方法を用いた場合、かかるコストは取引手数料と倉券保管料だけとなります。そのコスト分を入れても、リスク無しに利益が出る取引になります。実際消費税は最終的には保管価格にかかることになりますが、大きな影響は無いはずです。
ただ、このような手段を使わず、金投資は長期的保有を前提にして増税前に購入するのが王道だと思うのですが・・・。