現物を持たずに金の取引ができる「金CFD取引」とは?

CFD取引、つまり「Contract for Difference(差分の契約)」は日本では差金決済取引とも呼ばれています。

差金(さきん)決済取引とは、証券会社などに証拠金(預け金)を預け、株や債券などの原資産を保有しないまま、株価等の変動を反映し、その差額で取引を行うというものです(当然利益が出るばかりではなく損失が出ることもあります。FX=外国為替証拠金取引もCFD取引の一種と言えます。

このCFD取引を金で行うのが、金CFD取引です。以前は企業などの大口投資を行う機関投資家が対象となっていました。しかし現在ではネット証券会社等も取り扱いを始めるところが増えて、個人投資家も利用できるようになっています。

CFD取引はレバレッジ取引を行います。レバレッジ取引は少ない資産で多額の取引を行う方法です。まず担保として証拠金を証券会社に預託し、その証拠金に加えてその何倍かの資金を借り受ける形で取引を行います。元手を小さく、大きな取引ができるので、うまくいけば大きな利益になるというかわりに、損失が出た場合は証拠金を失うだけに留まらず損失分も支払わねばなりません。いわば、ハイリスクハイリターンな取引方法だと言えるでしょう。

ゆえに、初心者が最初の金融取引として選ぶといった類のものではありません。リスクを覚悟した経験ある投資家や、余裕ある資金力を持った投資家が行うべきものです。

CFD取引は、投資家自らが原資産を保有しているわけではないので、複数の金融商品を一つの口座で決済できます。24時間動いている原資産も取引できるので時間に縛られることもありません。さらには、扱っている原資産が下落しそうなときには売りから入ることもできるので、リスクが高い半面融通のきいた取引ができるともいえます。

一般的な株取引と異なり、CFD取引は店頭での相対(あいたい)取引によって行われます。投資家はCFD取引を扱っている証券会社・金融機関の提示価格に応じ、口座を開設して取引を行います。CFD取引はハイリスクハイリターンであるため、会社によっては取引開始前に審査を行う場合があります。

CFD取引の原資産には現物株や債券のみならず、株価指数、株価指数先物など様々にあって、会社によっても取扱商品が違います。口座を開設してから自分が望んでいた取引ができないということを避けるためにも、事前によく調査・比較を行っておくべきでしょう。

手数料も会社によって違いがあり、手数料以外の諸費用がかかる場合もあります。或いは、担保とした証拠金の何倍までの金額で取引できるかも異なります。

なお、CFD取引で利益を得た時は「雑所得」として確定申告を行う必要があります。

CFD取引の原資産を金によって行う金CFD取引も、取り扱っている会社により、日本の金市場で取引されているもの、ニューヨークのスポット取引(貴金属現物取引)のもの、金先物取引のものなど様々な原資産の対象があります。

一般的な金取引は、その時の相場に従い支払った金額相応の、金の現物を得ることができます。金相場は変動しているので購入額より下がる場合もありますが、自己資産となっているので誰かに返済しなければならないわけでもなく、錆びたり腐ったりするものでもないのでまた相場が上がるまでいつまでも保有できますし、或いは「家宝」のように代々受け継いでいくということも可能。

一方金CFD取引では、投資家が金の現物を得ることはありません。あくまで金を原資産として、その市場価格の変動によって取引を行うというものです。現物の金取引がまず現物を購入しなければ売ることができないのに対して、金CFD取引の場合は、まず売るということもできます。

原資産としてスポット取引を対象とした場合は金利が付くこともあるし、金先物取引を対象とした場合は金利が付きません。いくつかある金の取引種別によっても条件が変わってきます。金CFD取引を行う時は、まず原資産となる金の取引にどのようなものがあり、どの会社がどういった金取引を扱っているかについても調べておかねばなりません。

このような意味からも、CFD取引、特に金CFD取引は初心者が簡単に手を出せるものではないと言えるのではないでしょうか?

繰り返して述べますが、CFD取引は大きな損失が出る可能性も十分に含んだハイリスクハイリターンの取引です。しかし、そのリスクを軽減するために現物金先物取引を原資産にしつつ、取引単位を現物金先物取引の1/10にした「ミニ金」というCFD取引を提供している会社もあります。

「ミニ金」は実際の金先物市場に必要な資金より少ない資金での取引ができるので、その分リターンは少なくなりますが、リスクも減らすことができます。金CFD取引をやってみたいけれど、金融取引の経験が少なくリスクが怖いという場合はこちらを選んで小規模な取引を行ってから本格的に参入してみるというのも一つの方法。

現在、日本の証券会社・金融機関でCFD取引を扱っているところはまだまだ少なく、CFD取引市場としては未熟であると言わねばなりません。日本でCFD取引市場を拡大していくためには、まずその内容を広く周知し、利便性を高めねばならないという課題があると思います。

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