日本人は金のバーゲンハンター!?
「安くなったら買う」。そういう点から言えば日本人は「金のバーゲンハンター」とでも呼ぶべきでしょう。日本では円建て金1グラムの価格が500円下落するごとに金ブームが起きました。金を扱う店舗の前に行列ができるぐらいの熱狂ぶり。
1980年から2000年までの20年間、日本人は大量の金を個人単位で購入していましたが、その間円建ての金価格は下落する一方でした。
これは円高が進んだことと、ロコ・ロンドン・スポット価格が下がり気味だったという2つの理由が原因だったと考えられます。値が下がり含み損を抱えた金を、せっせと日本人は購入していた構図。その20年間で日本人が購入した金の総量は最低で1,500トン、最高で3,000トンと言われています。
しかしその後2003年ぐらいから金の価格は急騰します。金を買っていた人が利益を得られる水準まで価格が上昇したのです。この結果、買い一色だった日本人は売りに転じました。
現在の日本は金の売却大国。2011年だけで約100トンも金を輸出しています。金の生産国でもないのに、年間100トンも輸出した国は他にありません。そういう点から言うと日本は特殊な国なのです。
ちょうど80年代から90年代に金を購入した方達はシニア世代になっており、もう金という一種の保険を持っている必要性が薄れたと解釈することも可能です。また別の見方をすれば、80年代から90年代は日本人には金を購入するだけの経済力があったとも言えます。
その頃、インド、中国、東南アジア諸国の人達は金を買う余裕がありませんでした。しかし現在、日本人が金を売るのに対して、それらの国の人々は金を買っています。新興国の人達が金を購入できるだけの経済的余裕を手に入れたのです。そういう現状を見てみると、日本は20年先を進んでいると言えないこともありません。
円建てでの2014年時点の金1グラム当たりの価格は4,500円近辺。90年代の終わりに1グラム1,000円に達していなかったことを考えると、かなり高くなったものです。下落した時に買って、急騰した時に売る。日本人の感覚はまさに商売人と言ったところですが、欧米の投資家は逆の思考をします。
これをトレンドフォロワーといい、価格が上昇し始めるとさらに買っていきます。買いが買いを呼び価格はさらに急騰という循環を作り出すのです。逆に下落を始めるとどんどん売って、こちらでも循環を作っていくのです。ここ数年、下落している時に欧米ではさらに売られ、アジアでは反対に買い一色。このパターンが続いている状況です。アジア人は日本人と同じバーゲンハンター気質なのでしょうね。
2012年に入るとさすがに日本でも金の売却が減少してきてます。日本人が保有する金の総量が減少して、過去に買った人が売るというパターンに変化が生じているためだと思います。個人的な意見ですが、これからを生きる世代のみなさんは保険として金を購入しても良いのではと思います。
とは思ってみても、日本が再び金の輸入大国になるには時間がかかると思います。減少傾向にあるとは言え、未だ売りの方が買いよりも多い状況なのです。特に円建て金価格が昨今の円安のため上昇している現状では、バーゲンハンター気質である日本人に大きな買いは期待するだけムダでしょう。
価格が大きく下がれば、逆に買い先行になると思いますが、その局面はなかなか来る気配がありません。以前は商社によるロンドンへの金輸出が主流でしたが、今現在、日本はアジアに対する金の供給基地の役割を演じています。仮に日本が輸入大国に戻った場合、供給が間に合わない事態になるかもしれません。