中国以外の国で金を多く購入している国はどこ?
金の購入量が最も多いのはインドです。インドに輸入された金の大半は、装飾品に加工されています。インドでは経済成長の恩恵で中間富裕層が形成され、年間700トン~900トンの金が、2000年代半ばに購入されました。インドでは金を産出しないので、すべて輸入に頼っています。
ここ2~3年は金価格の高騰、インド経済の成長鈍化、インドの通貨であるルピーが下落という理由が重なり、金の需要が低下しており、近いうちに中国に抜かれるのが確実となっています。
そうは言っても、金はインド文化に根付いており13.5億の人口などから考えて、潜在的な金需要は未だに旺盛だと考えられます。今後経済が好転し、さらに国が豊かになれば金の需要は再び大きくなると考えられます。
インドをはじめ、ロシア、タイ、スリランカ、フィリピン、バングラデシュといった新興国の中央銀行は、金を購入しています。これらの国々は外貨準備がドルに偏っており、ドル下落の傾向からドルから金へ外貨準備を変える政策を推進しているのです。
これが金を購入している主な理由です。最近では新興国の中央銀行が有力な金の「買い手」として注目を集めるようになりました。彼らが2011年に金が急騰した原因のひとつだと言われています。また過去に大量の金を手放していた欧州の中央銀行も金の売却を止めたようです。
インド、中国に次ぎ、ベトナムもアジアで金需要が旺盛な国に数えられます。ベトナム戦争の難民がボートで祖国を脱出する際、そのボート代が金100グラムであったのは有名な逸話です。その名残かどうかはわかりませんが、ベトナムでは現在も金が重用され、自動車や不動産といった高額品を購入する際は、今でも代金の半額を金で支払う慣習があります。金が通貨の代わりをしているのです。
個人、法人を問わず金の延べ棒を資産として保有する需要も、ベトナムは世界有数の水準にあります。2008年には金の輸入量が莫大となり、それが原因となって貿易赤字が膨らんだ結果、政府が金輸入を一時的に禁止しました。銀行や企業が営む金の私設取引所もあり、出来高は相当なものになると考えられます。今後ベトナムの中央銀行がどういう手段で金取引を管理していくか注目されています。
イタリア、タイ、トルコは、金の装飾品の一大加工国となっており、加工用の金の需要が旺盛となっています。
先進国で、個人で金を購入する人はそれほど多くはありませんでした。2009年ごろまでは、個人の資金は株や債券に流れていたのです。ですが、ユーロ危機以降、株価の下落、ユーロの信用低下で資金が金に流入しはじめたのです。ネットで金の現物販売する業者のところへは、イタリアの富裕層をはじめ欧州各国からひっきりなしに注文が舞い込んでいるそうです。
韓国でも最近、金の輸入が増加しているようです。韓国も外貨準備のほとんどをドルに依存しており、日本と似通っています。2010年までは金を14トンしか保有していなかったのです。しかし2011年後半ころから金の購入が増加し始め、2011年末で54トン、2013年2月の時点で104トンまで急増しています。
ここまで増加しても韓国の外貨準備における金の占有率は1.5%程度です。未だドルへの偏りが改善していませんから、韓国の金購入はまだ続くと思われます。
1997年の経済危機の時、韓国では国中から金製品を供出してもらい、その量が200トンに達しました。その時の記憶がまだ鮮明に残っているのかもしれません。