中国が多くの金を買い集めている事実とその背景
世界一の金生産国は中国です。2011年だけで370トンが生産されました。しかしそれにも関らず400トンあまりを輸入しています。生産量と輸入量を合わせて800トン、つまりそれだけの金需要が中国にあるという訳です。
中国の中央銀行が保有する金の量は1,054トン、外貨準備における占有率は1.7%となっています。中国は外貨準備の大半をドルに依存しているのでこの数字になるのです。ドルの価値が下落傾向にありますので、現在は金への依存を増していると予測されていますが、公的な発表は一切されていません。
中国の場合、「政府が金を保有しなくても、人民が保有していれば、それは中国のモノである」という考え方のようなので、中国政府は制度面で銀行等を支援し、人民が金を持ちやすいようにしています。
中国の金需要は莫大ですから、金市場における中国の影響力は増しています。現在の中国は価格が下がったら買うという姿勢です。
政府の支援もあり、中国の金ビジネスの中心は銀行となっています。中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、いわゆる中国の4大商業銀行は、金の小売にここ数年集中しており、かなりの量の金をさばいているようです。中国工商銀行を例にとると、基本戦略として顧客に金の現物や純金積立を積極的に勧めているようです。
中国工商銀行は2億の口座があると言われており、そのすべての口座で金を1グラムづつ買ったら2億グラム、つまり200トンになってしまいます。中国農業銀行に至っては、3億の口座があるとか。実際に使用されている口座がその10分の1程度だったとしても、インパクトは相当あります。
中国人はもともと金が大好きです。結婚式での贈答品などには金が利用されることが多く、装飾品需要も莫大です。若い層に限って見ると、プラチナやパラジウム製の装飾品の方が人気があるようですが、内陸部などでは金の方がまだ人気を集めています。
また歴史上、中国で王朝交代が起こるとその度に通貨が変更されるため、人民が自国の通貨を信用していないということがあります。経済成長の恩恵で可処分所得が増え、金を購入できる余裕ができてきました。株や不動産投資が頭打ちになっているため、資産形成の一環として金の購入が増えているのです。
少し前までは金の輸入は4大商業銀行のみ許可されていましたが、現在は新たに5つの銀行も金の輸入ができるようになり、合計9行が金の輸入を行っています。
金に限っては中国政府は門戸を開いています。現状、金の輸入が許可されているのは9つの商業銀行だけですが、将来的に多くの銀行が金を輸入できるようにするそうです。こうした銀行のネットワークを利用して人民が今より金を購入できるようになれば、中国の金需要はさらに増えることでしょう。中国の金の購入量はさらに増加すると思われます。
中国は現在においても現金主義のお国柄であり、毎日莫大な現金が各地に輸送されています。この流通ネットワークを利用すれば、1.5日以内に中国全土のどこでも金を届けることが可能になっています。この分野に限れば、日本より進んでいると言えます。