中央銀行も金を保有しているの?

アメリカの中央銀行は8,133.5トンの金を現在も保有しており、世界で最も金を保有しています。また外貨準備高における金の割合も75%に達しています。

貿易の決済は通常ドルで行われるため、アメリカ以外の国はドル建ての資産を保有していますが、アメリカ自身、幾らでもドルを金融政策のために発行できるため、他国の通貨の信頼がドルに及ばない以上、他国の通貨を保有しても無駄なだけ。よってアメリカには外貨準備として金以外選択肢がないのです。アメリカの中央銀行が保有する金の量は、世界各国の中央銀行が保有する金のおよそ4分の1を占めています。

1950年代、イタリアとフランスは、ドイツと同じく金の保有量を増加させました。それぞれ、外貨準備における金の割合が7割を超えています。具体的な量は、ドイツが3,400トン、イタリア、フランスが共に2,400トンとなっており、保有する金の量は世界のベスト5圏内です。

他の欧州諸国に目を向けてみれば、オランダが612トンで外貨準備の63%余り、ポルトガルは383トンで外貨準備のなんと91.5%が金となっています。それ以外でもオーストリアが280トンで58%、スペインが282トンで33%、そして驚くことにユーロ危機の元凶であるギリシャでさえも、111.7トンの金を保有し、外貨準備の83.3%を金が占めているのです。これは2度の大戦を経験したことと、ドルに対する密かな対抗心が理由だと言われています。この数字から考えると、欧州ではドルよりも金を信頼していると思われます。

ちなみに世界の中央銀行が保有する金の総量はおよそ3万トン。その内アメリカが8,100トン、欧州各国が1万1,000トンを保有しており、両者だけで占有率が6割を軽く超えます。

現在、金の保有ランクは、1位アメリカ、2位ドイツとなっていますが、それ続く3位は国際通貨基金(IMF)です。IMFは1945年に設立され、為替や通貨制度の安定の名目で金を保有しています。

もともと加盟国の中央銀行に金の保有を義務付けたのが、このIMFでした。一定以上の外貨準備を金で保有することで債務の返済、為替介入、そして何より輸出入の決済をスムーズに行わせるのが目的です。

現在IMF加盟国は189カ国をかぞえ、その加盟国は外貨準備として保有する金の量を申告しなければならないようになっています。その申告されたデータから、各国の中央銀行が保有する金の量がわかるのです。

先進国だけではなく新興国の中央銀行も最近、金の保有量を増加させています。新興国の外貨準備はドルに偏っていますから、その是正が目的だと思います。メキシコ、ロシア、タイなどが数十トン単位、ベラルーシ、タジキスタンが数トン単位で金の保有量を増やしているようです。この5年あまりで新興国が行った金の買付の総量は1,000トンを超えましたが、これも金価格の上昇に影響を与えたと見られています。

新興国の外貨準備はまだドルに偏っていますから、新興国の金の買付は当分終わらないと思われます。

ここで注意しなければならないのは、世界一の外貨準備高を誇る中国の動向。中国は金を1,054トン保有していますが、外貨準備における占有率はわずか1.7%。この数字は過去3年間全く変化していません。実は中国はここ数年、金の保有量の数値を更新していないのです。中国は世界一の金生産国であるのと同時に、2011、2012の2年間に1,000トンもの金を輸入しているのです。それにも関らず中央銀行の金の持ち高が変化しないのは、おかしいと言わざるをえません。実際のところ、中国の金の持ち高はかなり上昇していると予想されます。

またある中国の高官は、「中央銀行が購入しなくても、人民が購入すれば、その金は国が保有するのも同じ」といった趣旨の話をしたそうです。この発言から考えると、中国国内の金はかなりの量になっていると考えられます。

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