金はどのような時に売られるのか?
仮に今、金を持っていたとして買った時よりも金の価格が上がっている場合、あなたはどうしますか?売り払いますか?さらなる上昇を期待して買い増しますか?金の価格が変動すると、様々な立場の人が金の売り買いを始めます。
金の売り手としては、金を保有する投資家、中央銀行、金の鉱山会社などが代表的と言えるでしょう。
景気が良くて金利が高い時。この時に金を保有する投資家は、金を売りに出す良いタイミングと見ています。金には金利がつかないのが原則ですから、金利が高い時は金を保有するより、金融商品で運用する方が有利になるからです。金で利益を上げられるのは価格が上昇した時のみ。
ですが、景気が良いときは企業の業績も良くなり、株式市場で運用した方が利益を得られる可能性が高いのです。また好景気時は企業の設備投資意欲が旺盛で、その資金ねん出のため金を売却する動きがあります。金は保管料などのコストがかかり、他の金融商品と比較してデメリットも多いのです。早い話が、景気が良くて金利が上がると儲け話が多くなり、そちらに資金が流れていくのです。
金は各国の中央銀行が外貨準備の一部にするため保有しています。アメリカの好景気に沸いた80年代から90年代の間では、中央銀行も金利が高かったので金を売却していました。金の売り手と買い手は毎年統計が取られていますが、売り手として中央銀行の項目ができるくらい売られていました。ただ現在は金融不安に備えて中央銀行は買いに転じています。
先物取引と聞くと反射的に危ないと感じる方は少なくないと思います。先物取引は将来のある期日までに売り買いする約束をし、現時点で価格を決める取引です。仕組みが複雑な上にリスクも高いですから、どんな人にでもお勧めできるモノではありません。ですが、金の世界では先物取引は必要不可欠な取引なのです。
金の鉱山会社が金を市場に出せるまでは平均6カ月を要します。6カ月前に市場の値がどうなるかわからないのに、鉱山に莫大な資金を投入するには勇気が要ります。そこで鉱山会社は金鉱脈を発見すると、その金鉱から入手できそうな量と同じだけの金を借りてきて、今の市場価格で売ってしまうのです。先物売りをすることで販売価格を決めてしまうということです。その後掘り出した金で借りた分を返します。
金の鉱山会社は生産者である一方、先物で金を売却する手法を使ってきました。金の値下がりリスクを回避するためです。ただ金の価格が上昇に転じてからは金の鉱山会社による先物売りはほとんど見られなくなりました。現在は過去の売った先物の買い戻しをやっています。
2010年ごろから、ロシア、ブラジル、メキシコ、タイ、カザフスタン、韓国などの新興国の中央銀行が金の買い手として注目を浴びました。そして2012年には中央銀行の金の購入量が535トンとなり、1964年以来の高水準となっています。この理由はドル偏っていた外貨準備を調整するためで、リーマン・ショックの経験から資産を分散させる必要性を感じ、金へ傾注したのだと思われます。