金はどれくらいの生産コストが必要?

新産金にかかる生産コストには採堀費用、製錬費用、鉱山の権利金、生産にかかる税金などがあります。これに減価償却費をプラスしたものが全体のコストになります。金鉱の状態によってはだいぶん事情が異なってきます。

南アフリカを例に挙げれば、かの国の金鉱は地下3,000メートルから4,000メートルの間にあり、採堀するためには大量の機材と時間が必要で、その分生産コストが高くなります。一方中国では露天堀りが今でもメインですから、生産コストは比較的安く済みます。このような新産金の生産コストの平均は、1トロイオンス当たり1,200ドル近辺だと言われています。

鉱山会社が新しい金脈を発見したら、採堀、破砕、製錬、形成するまでのコストを計算し、仮に採算割れしそうでしたら採堀しません。仮に金の価格を1,500ドルとすると、生産コストが1,000ドルかかるとすれば1トロイオンス当たり500ドルの儲けになりますが、生産コストが2,000ドルかかると逆に500ドルの赤字になるのです。赤字になると株主が黙っていませんので、利益が見込める鉱山ではないと採堀しないのです。

毎年、金の生産コストは上昇しています。その理由は人件費の高騰に加え、権利金や税金、機材に使う燃料の価格、採堀に使う薬品の値段など、あらゆるもの値段が急上昇しているからです。また世界的なインフレ傾向も生産コスト上昇の理由に挙げられます。今後、上がることはあっても生産コストが下がることはまず無いと考えられます。

生産コストは金の価格の下値の目安になります。生産コストを割り込んだ価格で金を売る業者がいる訳がないからです。アナリストの中には2015年の金の生産コストの世界平均が1,900ドルになると予測していた人もいます。現在生産コストがダントツで安いのが中国です。もし中国の人件費が上昇すると生産コストも当然上がり、金価格がさらに高騰する可能性が高くなります。

仮に生産コストより金の価格が下になったら、新産金の生産は止まるでしょう。そうすると供給が間に合わなくなり、価格が上昇するでしょう。そうなると新産金の生産は再開され、今度は金の価格が下がることになると考えられます。

不変性という金の特性から金が消えてなくなることはありません。新産金が毎年採堀されているのですから、金の総量も毎年増えていっています。いわゆる都市鉱山にもたくさんの金が眠っている状態です。新しく金鉱山から採堀するより都市鉱山から収集する方がコストを抑えられるなら、そちらを主の金の供給源とすべきです。

現在日本に金を採掘できる鉱山は菱刈鉱山しか残されていません。しかし一方で日本企業には、都市鉱山を含む中古金スクラップから金を収集する技術に長けたところがたくさんあり、そういう企業は現在スクラップの回収に力を入れています。

金のスクラップは様々な形状になっています。一番馴染みがあるのは装飾品のスクラップではないでしょうか。こういったものは金純分が高く、リサイクルも容易にできます。日本よりも価格競争力がある外国の製錬所に輸送し、そこで製錬して純度99.99%の金に鋳造し直すのです。

日本が強い金リサイクル分野は電子部品からリサイクルする分野です。パソコンや自動車の電子部品から金を取り出すには、高度な技術を必要とします。日本の製錬会社の中には過去の製錬技術を応用し、不純物が混じったものから金だけを抽出する技術に長けた企業もあります。こういった類の技術は、日本企業の独壇場です。

もちろんスクラップに含まれている金の純分は金鉱石に含まれるそれよりかなり高いため、しっかりとした技術と物流網があれば十分に採算が合います。

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