金は世界のどこで産出されているの?
新産金、つまり新しく掘り出される金の総量は年間2,800トン程度です。そして2007年以降世界最大の産出国になったのが中国で、370トンの金が毎年産出されます。次に産出量が多いのがオーストラリアの258トンで、以下アメリカ232トン、ロシア211トン、南アフリカ198トン、ペルー188トンとなっています(いずれも2011年の産出量)。地域的には世界各地に点在しており、そのことが金が安定供給できている理由になっています。
以前は、金と言えば南アフリカといわれ、南アフリカが世界最大の金産出国でした。1960年から1970年までの間、産出量は毎年1,000トン以上を誇り、世界の金産出量の半分を占めていて、他を寄せ付けないガリバー的な存在でした。ところが1980年代に入ってから産出量が激減、2012年に至っては年間産出量は180トンを割り込み、世界第6位まで順位を下げてしまったのです。
金の産出量が激減した理由は金の採堀法にあります。埋蔵量だけで言えば南アフリカは6,000トンあると言われており、現在でもトップクラスです。ですが、そのほとんどは礫岩質の堆積岩鉱床であり、また金鉱床は地表から3,000~4,000メートル下にあるため、そこまで鉱道を作り、60度にも及ぶ温度を調整する機材が必要なのです。
そのため、金を掘り出すには巨額の資本が必要です。南アフリカがアパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策をとっていたのは、黒人労働者を効率よく金採掘に使うためだったのかもしれません。その証拠にアパルトヘイトが撤廃されてから、南アフリカでの金の産出量は減少しているのです。
南アフリカの金の産出量が右肩下がりに減少している一方、ここ最近、右肩上がりに金の産出量を増加させているのが中国です。高い経済成長とともに増大した中国国内の金需要を満たすために、鉱山会社が増産体制に入っています。また経済成長で資金調達が容易になったことも追い風になっています。政府の後押しもあり、中国の金生産はさらに拡大すると思われます。中国の主な金生産地は、山東省、湖南省、福建省、内モンゴル自治区で、これらの地域だけで中国の金生産量の47%あまりを占めています。
一方、オープンピットと呼ばれる金鉱山スタイルが、オーストラリアでは有名です。大陸の西側にある「スーパーピット」と呼ばれるアリ地獄に形状が似ている金鉱山は、月から見える地球上の人工物2つのうちの1つだと言われています(ちなみにもう一つは万里の長城らしいです)。オープンピット内で巨大な重機を使って金を採堀するオーストラリアは、作業効率の面から言えば世界一位かもしれません。
アメリカでは18世紀から19世紀にかけて、カリフォルニアを中心にゴールドラッシュに沸きました。最初は世界各地から鉱山掘師たちがやってきて、個人単位で採堀していましたが、資本が投入され、金鉱山捜索が本格化するとネバダ、コロラド、アラスカ各州で相次ぎ金鉱山が発見され、アメリカの金産出量は爆増、現在に至っています。
ロシアについては冷戦の関係で長らく情報がありませんでしたが、現在はアメリカと同程度の産出量があります。
日本はかつて「黄金の国」と呼ばれたこともありましたが、現在は菱刈金山以外に金を産出する鉱山はなく、年間の産出量も8トンあまりと、他国と比べるべくもありません。