金の埋蔵量は世界中でどれくらいあるの?
埋蔵量を経済用語から考える場合、単純に地中深くにある金の量ではなく、採算ベースに乗る金の量を指します。よって埋蔵量は価格や技術や経済状況で変化します。
例えば昔から「石油の埋蔵量は、あと30年分しかない」と言われていましたが、その時代から40年以上経過した現在でも石油は枯渇していません。
埋蔵量とはそんなものなのです。
2012年にアメリカ地質調査所が発表した鉱物商品概要によると、世界の金の埋蔵量は、オーストラリア7,400トン、南アフリカ6,000トン、ロシア5,000トン、チリ3,400トン、インドネシアとアメリカが3,000トン、カナダ2,400トン、ペルー2,000トン、中国が1,900トンです。そして世界各国の埋蔵量を合計すると5万1,000トンとなるのです。現在毎年2,400トンのペースで採堀されていますから、20年で金の資源は枯渇することになります。
地中深く存在し、まだ掘り出していないという定義ならば金はまだまだ眠っているはずです。火成岩には1トン当たり0.005グラムほどの金を含有しています。同じ1トンの火成岩には、他の金属が金の数百倍含まれていることを考えたら、金はやはり希少です。
宇宙から飛来する隕石の中にも1トン当たり0.65グラムの金を含み、さらに地球の深奥部の鉄ニッケル部には、相当量の金が含まれていると推測されます。また海水にも金が含まれています。金も水に溶ける性質が無い訳ではないのです。海水中の金の濃度は0.0005PPMというとんでもなく薄い濃度ですが、地球上の海水の総量を考えると50億トンもの金が海水中に溶けていることになるのです。
海水から金を抽出する技術はまだ確立していませんが、金の価格が上がり続け、さらに技術革新が進めば採算ベースに合う抽出法が開発されるかもしれません。ちなみに第1次世界大戦当時のドイツの化学者フランツフィッシャーは、戦費調達のため海水から金を抽出する実験を行ったようです。
不変性から、金は掘り出されただけ地上在庫量が増えていきます。そのため、仮に地中に埋蔵された金が枯渇したとしても心配する必要はありません。また現在の技術力で採堀できない金も、将来的には採堀できるようになるかもしれないのです。
そうすると、埋蔵量が減少することよりも地上在庫が増加することについて考える必要があるかもしれません。現在の金の地上在庫は、オリンピック用プール3.5杯分で埋蔵されている金の量はあと1杯分程度です。しかし金価格の上昇と技術革新で、たぶん「埋蔵量」が大きく減少することはないと考えます。
太古の昔から人間が掘り出した金の量は、およそ17万トンです。これだけ掘り出すのに4000年かかりました。そう考えれば残り5万トンを掘り出すには、あと1200年かかる計算になります。もちろん技術などを加味しますとムダな計算ですが・・・。
金の鉱山は世界各地に点在しており、そのため金の供給には問題はありません。プラチナと異なり南アフリカで問題が生じても、金にはほとんど影響はないのです。また現在は都市鉱山の埋蔵量も考える必要があります。2008年に日本の物質・材料研究機構が発表したデータによると、日本の都市鉱山に埋蔵された金の量は6,800トンで、世界の金鉱山埋蔵量のなんと16%に相当します。南アフリカの地中にある埋蔵量以上の金が、日本に眠っているのです。このことから考えても、金の埋蔵量の枯渇について心配するだけ無駄ではないでしょうか。