金が持つ本当の価値とは何?
金が持つ価値とは何ぞや?これは説明するのが難しい問題です。金には様々な面があり、30年近く金取引に携わってきたプロでも一言で言い表すのが難しいもの。まあ、強いてひとつ特徴を挙げるとすれば不変性でしょうか。
太古の昔から、金はその価値と存在を広く認められてきました。他の金属とは異なり金は砂金などの形で自然界に存在するため、取り出すための特別な技術を必要とせず、人々は利用できました。
金を溶かすことができる融点は1,064度であり、薪の炎でも簡単に溶かすことができる上、軟らかさも合わせもっており、加工が容易なため広く利用されてきたのでしょう。ですから、エジプトやメソポタミアの古代文明の時代から金の造形物が作られ、今も現存しております。少なくとも古代から金は人間により加工され、尊いモノとして珍重されてきたのです。
金のどんなところに私達の祖先は価値を見出したのでしょうか?あくまで想像なのですが、ピカピカと光って綺麗な事、たしかな重さがある事、希少である事、そして変化しない事、早い話が他の金属と異なり錆が来ずその美しさが永く続くところに価値を見出したのではと考えます。
前述した「変化しない事」ということは本当に珍しい特質と言えます。
自然界に存在するあらゆるモノに対して金は反応しません。通常の金属であれば酸化して錆びるはずです。しかし金は酸化せず、元の形を保ち続けるのです。まあ唯一、王水と呼称される濃塩酸と農硝酸3:1の混合液には溶けてしまいますが、通常これは自然界に存在しません。
この変化しない特質があるからこそ、金製の古代文明の時代の造形物が現存し、私達も博物館などでそれを鑑賞することができるのです。
一方、物事は常に変化していきます。形あるモノはいつか朽ち果てて行くモノですが、その法則の唯一の例外が金なのです。
金を最初に発見した人は、おそらく金の永続的不変性を知る由はなかったはずです。せいぜいピカピカ光るキレイな物体ぐらいの認識だったと思います。しかし歴史を経るごとに金の永続性を知り、価値を保存するのに金より勝るモノはないと気付いてきたのではないでしょうか。
金は鋳造されて通貨となり、近代では金そのものを通貨発行の裏付けとした「金本位制」なるものまで登場しました。価値を保つための手段としては金より優れたものはありません。金が価値の保存に使用されたことにより、いつの間にか金そのものにも価値がついたのだと思います。
そして多くの人がその価値を認めたからこそ、金の価値を不動のモノとしたと考えられます。以上のことから金の価値を理論的に数値で表すのは不可能だと思います。金の生産コスト、金の産業需要の数字など、計算出来るモノもありますが、金の価値を決めるのはそんな数字的なモノではなく、人間の金に対する崇拝性ではないでしょうか。
このような金の価値を崇める人間の習性が、経済危機時などに紙幣や債券などそれの発行した元の信用に頼るモノより、金に資金を流入させるのでしょう。金が最後の逃避先と呼ばれるのは金の内在的価値に縋るという人間の習性に基づくのは確実です。長い歴史を経る間、証明されてきた力が金が金であるための価値なのです。