業界用語で純金は「やき」、金を焼くってこと?
寿司屋で酢飯を「しゃり」、お茶を「あがり」と呼ぶように、貴金属業界にも独特の符丁、いわゆる業界用語があります。
たとえば純金のことを「やき」と呼びます。これは江戸時代の金山で行われていた「焼金」という作業に由来する言葉。「焼金」とは、金山から産出した「自然金」を、「純金の純度にまで」高めるためにおこなわれていた作業です。
自然金には多少なりとも銀が含まれていました。とりわけ、佐渡の金山から採集される自然金は銀を40パーセント近くも含んでいました。そこから純金を得るには「焼金」の作業によって、自然金から銀を取り除く必要があったのです。
まず、金山で産出した自然金を鉄盤の上で摺りつけ砕いてから、ふるいにかけて「上粉」にします。その「上粉」と塩をよく混ぜ合わせ、土器のなかに入れて焼き、焼き上がった「焼金」を冷やしてから金桶のなかでつき砕き、水でよく洗います。
さらに、洗った「焼金」を鉢に入れ、お湯を入れて摺木で摺ります。
お湯を七、八度替えながらこの作業を繰り返すと、銀が塩と結びついて塩化銀となって分離します。これで、自然金から純度の高い金を得ることができるのです。
これが現在も使われる符丁「やき」の語源となった工程なのです。